「富岳」成果創出加速プログラム:「富岳」を利用した革新的流体性能予測技術の研究開発

ご挨拶

 世界最高水準のスーパーコンピューティング技術は、科学技術の振興、産業競争力の強化、国際貢献、安心・安全な国づくりなどの実現に不可欠な国家基幹技術と位置付けられています。また、スーパーコンピュータ「富岳」などのフラッグシップ計算機は、Society5.0の実現に大きく貢献する、データ科学的手法も含んだ研究開発を実施するための不可欠な計算基盤として位置付けられています。このようななか、東京大学生産技術研究所は、7つの大学・研究機関と協力して、ターボ機械や自動車等を対象として、設計・製造プロセスにおいて変革させることを目指して、「富岳」の有する高い計算性能を十二分に引き出すことができるアプリケーション・ソフトウェアの開発プロジェクト、「近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発」(以下、ポスト「京」重点課題⑧)を推進してきました。
 2020年4月から3年の期間、ポスト「京」重点課題⑧の成果を引き継ぐ形で、文部科学省の「富岳」成果創出加速プログラムの領域③「産業競争力の強化」の一つの課題である「「富岳」を利用した革新的流体性能予測技術の研究開発」を推進することとなりました。このプロジェクトでは、ポスト「京」重点課題⑧で実施したもののうち、ターボ機械および自動車の分野を対象として、「数値曳航水槽の実現」、「多段遠心ポンプの内部流れと性能の直接シミュレーション」、「圧縮機サージの直接解析」、「実走行状態における自動車空力性能の予測」、および、「自動車の空力・構造・音響連成解析」の合計5つのテーマを設定し、研究開発を行っています。
 多様なニーズをとらえた付加価値の高いものづくりの推進は、我が国の持続的成長を支える産業の発展に必要不可欠な重要政策です。アプリケーションにおいて最大で「京」の100 倍の性能を発揮することが期待されている、「富岳」 の共用が2021年4月に開始される見込みです。この「富岳」を利用して、ポスト「京」重点課題⑧で得られた成果の実証研究を加速し、ターボ機械と自動車の製品開発において、重要な現象でありながら従来は経験的に扱われていた複雑な流体現象の解明に貢献していきたいと考えています。
 このプロジェクトは、東京大学生産技術研究所を代表機関として、神戸大学、九州大学、岩手大学、豊橋科学技術大学、山梨大学、および理化学研究所計算科学研究センターと密接に連携して推進されますが、一般社団法人ターボ機械協会「流体性能の高精度予測と革新的流体設計分科会」やHPCを活用した自動車次世代CAEコンソーシアムに参画されている産業界の方々とも密接に連携をして実証研究を実施することとなっています。その実証研究の中では、製品開発時の問題を例題として、開発されたシミュレーション技術を適用していきます。この結果として、3年間のプロジェクトが終了時に、開発したシミュレーション技術が各企業の製品開発の場で実用性の高いものとする所存です。
 皆様方のご理解とご支援を頂ければ誠に幸いです。

加藤千幸 センター長・教授

課題責任者
加藤 千幸
東京大学生産技術研究所
革新的シミュレーション研究センター センター長・教授