「富岳」成果創出加速プログラム:AIの活用によるHPCの産業応用の飛躍的な拡大と次世代計算基盤の構築

概 要

 本課題は、AIを活用することによってHPCの産業応用を飛躍的に拡大し、産業界におけるHPCの実用化を加速するための「基盤的な研究」、基盤研究の産業上の効果を検証するための「実証研究」、および、実証された基盤研究の成果を幅広い産業分野に展開するための「次世代計算基盤の構築」に係る、以下に示す6つの研究テーマを実施することとしています。
 「基盤研究」としては、HPCの計算コストを飛躍的に削減するための「AIを活用した実機スケール乱流の予測モデルの開発」、利用者が計算環境やデータの規模を意識することなく、シミュレーションパラメータや可視化パラメータを探索し、調整することを可能にする「スマートin-situ可視化基盤の構築」を実施します。
 「実証研究」としては、カーボンニュートラル時代に求められるものづくりの在り方を象徴するテーマとして、「実船の推進性能の予測」、「自動車の空力騒音予測と空力騒音低減手法の確立」、および「ヒートポンプ用ファンの性能向上」の3つの研究テーマを設定し、「基盤研究」で得られた成果の産業上の効果を実証します。
 「次世代計算基盤の構築」では、今後5年から10年間の計算機ハードウェアの進展を視野に入れた、産業界におけるHPCの実用化を加速するための研究開発を実施します。そして、精度ならびに産業上の効果を実証した、AIの応用でその価値を飛躍的に高めたHPCシミュレーションを、次世代HPCのための基盤研究の成果を連携組織である「一般社団法人ターボ機械協会」、「HPCを活用した自動車次世代CAEコンソーシアム」等、幅広い産業分野に展開します。


実施体制

 本課題は、東京大学生産技術研究所を代表機関として、神戸大学、豊橋科学技術大学、日本大学、明治大学、理化学研究所計算科学研究センター、一般財団法人 日本造船技術センターおよび株式会社本田技術研究所とが密接に連携し、研究開発を推進しています。そして、ターボ機械、および自動車産業を主たる出口として、「富岳」を利用した大規模流体シミュレーションの産業上の効果を実証することを目的として実施するものであるため、一般社団法人ターボ機械協会と国立研究開発法人理化学研究所内に設置した、連携実施組織「流体性能の高精度予測と革新的流体設計分科会」、「HPCを活用した自動車次世代CAEコンソーシアム」、およびNEDOの洋上風力発電に関するプロジェクトと強力に連携する体制を構築し、課題を推進するとともに、社会実装や産業界における人材の育成を図ります。
 プロジェクト全体の連携を密としつつ円滑に運営していくため、東京大学生産技術研究所革新的シミュレーション研究センター内に課題推進事務局を設置します。課題推進事務局では、課題の運営方針を決定する、課題参加者に加えて産業界のメンバーを構成員に迎えた推進会議を運営するほか、シンポジウム等を開催するなどの成果発表、広報普及、アウトリーチ活動を担います。特に、連携実施組織間の交流の場を設けるなど、分野間連携の促進を図ります。